2017年06月17日

高カロリー輸液のルート閉塞について

この記事は当会会報16号からの転載です。また、筆者が調べた情報から参考になると判断したものをまとめて作成しましたが、絶対に正しいと保証するものではありません。この記事をどう利用されるかはご自身の判断と責任になります。当会は責任を負えませんので、あらかじめご了承願います。
※当会会報16号では「CVC」のことを「CV」と誤って表記していたため、修正しています。

高カロリー輸液を行うためのCVC(中心静脈カテーテル)を入れるルートは、左右の内頸静脈と左右の鎖骨下静脈、左右の大腿静脈の6本あります。閉塞すると血液も流れなくなるので、血液は周りの血管を流れるようになって、内頸静脈や鎖骨下静脈、そして、この2つの静脈がつながる上大静脈が閉塞した場合は、首や胸元の表皮静脈が青く網の目のように目立つことがあります。

治療法は小腸移植のほか、閉塞したルートに改めてCVCを入れられるように、ウロキナーゼやヘパリンという薬を使って閉塞の原因である血栓を溶かしたり(血栓溶解療法)、血栓ができにくくしたり(抗凝固療法)、カテーテルについたバルーン(風船)を使って閉塞し始めている部分を押し広げたり(PTA/経皮的血管拡張術)、カテーテルを使ってステントと呼ばれる筒状の網を入れて(ステント留置)閉塞しにくくしたりする方法があります。また、腕頭静脈や肝静脈、腰静脈など6本以外のルートからCVCを入れる方法もあります。

ルート閉塞の原因は、血液に含まれるフィブリンなどがCVCに反応して固まることで血栓になったり、CVCや近くの血管にくっついて血管を細くしたりすることです。このくっついたものがCVCの先端でひらひらとしたもの(線維性皮膜)になると、逆血がとれなくなることがあります。このときに無理な操作をするとひらひらとしたものがちぎれて血栓になることがあるので、慎重に対応する必要があります。

フィブリンなどが固まるのは傷口をふさぐ働きでもあるので完全に防ぐことはできませんが、ルート閉塞が起こりにくいようにする方法としては、消毒などの日常的な清潔操作、予防的なエタノールロック、CVCの早めの入れ替え、高カロリー輸液のカロリーをなるべく下げる、といったカテーテル感染の予防法のほか、ロック時にヘパリン生食を使ったフラッシュを徹底して行う、CVCからはなるべく脂肪製剤を入れない、体質などで血栓ができやすい場合は高カロリー輸液にヘパリンを加える、早めの検査と治療、があります。

(代表理事:高橋(正)記)

【参考】
当会第17回交流会で行われた、慶應義塾大学医学部小児外科の下島直樹先生の講演・ほか
posted by 高橋(正) at 22:54| Comment(0) | 参考情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月18日

腸管不全における微量栄養素欠乏症について

この記事は当会会報12号からの転載です。また、筆者が調べた情報から参考になると判断したものをまとめて作成しましたが、絶対に正しいと保証するものではありません。この記事をどう利用されるかはご自身の判断と責任になります。当会は責任を負えませんので、あらかじめご了承願います。
 
注意が必要な5つの微量栄養素
 短腸症候群を始めとする腸管不全では、たんぱく質、糖質(炭水化物)、脂質(脂肪)だけでなく、ビタミンやミネラルのように、ほんの少しだけ必要な栄養素(微量栄養素)が不足することがあります。中でも特に問題になるのが、亜鉛、セレン、カルニチンの3つで、見落とされやすいのがビオチンとビタミンB1の2つです。この5つの微量栄養素について、欠乏症が起こりやすい条件や起こった際の主な症状などについてまとめると次のようになります。

亜鉛
 口から食べないで、栄養を完全に高カロリー輸液に頼っている場合、クローン病など、栄養が吸収できなくなる腸の病気の場合、頻回の下痢を起こしている場合、腸瘻がある場合、膵液を多く失っている場合に欠乏症が起こりやすいです。ただ、現在は高カロリー輸液に亜鉛が添加され、補充のための微量元素剤も使われているので、高カロリー輸液だけに頼っているからといって必ず起こるというわけではないと思われます。
 欠乏症が起こると、口の周りや会陰部の皮膚炎、脱毛など、皮膚や粘膜の症状が現れたり、傷の治りが悪くなったり、成長障害、味覚や嗅覚の障害、食欲不振などが現れたりします。
 なお、治療は亜鉛の補充によって行いますが、亜鉛だけ補充していると銅が不足する可能性があるので、補充している間は銅の値にも注意が必要です。また、エレンタール(R)、エレンタール(R)P、ラコール(R)のように亜鉛が少ない経腸栄養剤もあるので、これらに頼っている場合も注意が必要です。

セレン
 口から食べないで、栄養を完全に高カロリー輸液に頼っている場合、エレンタール(R)、エレンタール(R)P、エンシュア・リキッド(R)のようにセレンが少ない経腸栄養剤に頼っている場合、低出生体重児(未熟児)、難治性下痢症やクローン病の場合、口から食べていても便の量が多い場合に欠乏症が起こりやすいです。特に、長期間高カロリー輸液だけに頼っている場合は起こりやすく、1ヶ月以上高カロリー輸液や経腸栄養剤に頼る場合は定期的にセレンの測定と補充を行った方が良いようです。
 欠乏症が起こると、爪が白くなったり、変形したりするほか、貧血になったりします。子供の場合は、髪が脱色したように茶色になったり、脱毛したりもします。さらに、重症の場合は、不整脈や頻脈を引き起こす心筋症、足の痛みや立ち上がれないといった症状が現れたりします。
 治療はセレンの補充によって行いますが、現在のところ、すべての病院でできるわけではありません。亜鉛やセレンなどを多く含むサプリメント(ブイ・クレス、テゾン)、経管栄養用食品(アイソカル(R)1.0ジュニア)で補充することもできますが、保険が使えないものもあるので注意が必要です。

カルニチン
 寝たきりで体が小さく、筋肉が少ないと考えられる小児や2歳以下、特に、離乳食期の小児で、長期間高カロリー輸液や経管栄養(エレンタール(R)P、ラコール(R))を行っている場合、特殊ミルクを使っている場合、ピボキシル基を有する抗菌薬(フロモックス、メイアクト、トミロン、オラペネムなど)を長期間使っている場合に欠乏症が起こりやすいです。ただ、現在は高カロリー輸液にカルニチンが添加されているので、高カロリー輸液を長期間行っているからといって必ず起こるというわけではないと思われます。
 欠乏症が起こると、肝臓など様々な臓器に脂肪がたまったり、意識障害やけいれん、低血糖、筋力低下、心筋症や心不全などになったりします。
 治療はカルニチンの補充によって行い、亜鉛、セレン、カルニチンの量が改善されたエネーボ(R)に経腸栄養剤を変更したりもします。ただ、エネーボ(R)だけにすると他の栄養素が多くなりすぎることがあるので、補助的に使うと良いようです。

ビオチン
 総合ビタミン剤を添加していない高カロリー輸液を行っている場合、クローン病など、栄養が吸収できなくなる腸の病気の場合、頻回の下痢を起こしている場合、腸瘻がある場合、膵液を多く失っている場合、ミルクアレルギー用を含む特殊ミルクを長期間使っている場合、抗てんかん薬(プリミドン、カルバマゼピン)を使っている場合、抗生剤を長期間使っている場合、乳酸菌の一種であるラクトバチルス類を使った乳酸菌製剤を長期間大量に使っている場合に欠乏症が起こりやすいです。
 欠乏症が起こると、口の周りや顔面、外陰部の皮膚炎、脱毛、重度になると運動失調や乳酸アシドーシス、けいれん、乳幼児は成長発達障害になったりします。なお、必須脂肪酸や微量栄養素の不足による皮膚症状はどれも似ていて特徴があまりないので、長期間栄養療法を受けている患者に皮膚症状が現れた場合は、感染だけでなく、何かが不足していると考えることが重要です。
 治療はビオチンの補充によって行います。

ビタミンB1(チアミン)
 高カロリー輸液を行っている場合、下痢がひどい場合、糖質にかたよった食事をしている場合、アルコール中毒の場合に欠乏症が起こりやすいです。
 欠乏症が起こると、乳酸アシドーシスになるほか、欠乏が長期間になる場合は、目をうまく動かせなかったり、何かにつかまらないと歩けなかったりといった症状が現れるウェルニッケ(Wernicke)脳症や脚気<かっけ>になったりします。
 治療はビタミンB1の補充によって行います。

(代表理事:高橋(正)記)

【参考】
当会第12回交流会で行われた、筑波大学小児外科の増本幸二先生の講演
「PMDAからの医薬品適正使用のお願い No.8 2012年4月」(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構のホームページ内)※PDF注意
posted by 高橋(正) at 20:28| Comment(0) | 参考情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする